2020年8月21日

縦目楼:小堀遠州の傑作を現代に再現した茶室

縦目楼:小堀遠州の傑作を現代に再現した茶室



「縦目楼(しゅうもくろう)」は、「ふじのくに・茶の都ミュージアム」という博物館の敷地内にある建物です。その建物の中に茶人・小堀遠州のつくった茶室が再現されています。

実のところ、小堀遠州とこの博物館がある静岡県島田市とは何の関係もありません。あえて関連を探すと、小堀遠州は戦国時代から江戸時代のころの茶の湯のビックネームの1人です。そして島田市は茶の産地として有名な街です。この茶室を通して歴史上の茶人の偉業に思いを馳せようとしたのでしょうか。


完成時の姿 建設会社のホームページより

茶室というと、歴史的な建物の中では通好みと言えるかもしれません。現存する茶室の多くは所在地を見つけ出すのすら難しいですし、どこにあるか分かっても、その多くは一般非公開で、観光の目的地にしづらいのではないでしょうか。この縦目楼はこの博物館を訪れた人ならだれでも、ただし少しの追加料金が必要ですが、見学することができます。その上、この茶室は素材選びから茶道家の監修が入った、本格的なもので、現存する茶室に引けを取らないクオリティです。


縦目楼の中にある茶室たち

縦目楼は、小堀遠州が図面を書いた茶室のいくつかを組み合わせて一つの建物として再現したものです。玄関から手前半分は京都・石清水八幡宮の「滝本坊(たきもとぼう)」を再現した空間で、後ろ半分は伏見奉行所にあった数寄屋の茶室「友賢庵(ゆうけんあん)」、鎖の間の茶室「臨水亭(りんすいてい)」です。さらにそのつなぎ目に、「向峯居(こうほうきょ)」という特異な茶室がとび出しています。


滝本坊の書院


この建物は、4つの茶室の集合体となっているのです。滝本坊の書院と、向峯居までは入館料のみで見学できますが、それ以降は、別途呈茶券を購入してお茶会に参加しないと入れません。

この建物は、1998年につくられていますので、築20年というところです。また、茶室棟を取り囲むように日本庭園が配されていて、茶室からは江戸時代の光景に近い雰囲気を再現しています。


臨水亭 鏡の間

伏見奉行所の3つの茶室は、元々の建物での位置関係に忠実に再現されています。小堀遠州は、客をまず数寄屋の茶室・友賢庵に招き、次に臨水亭の鎖の間の茶室に移動することで客を感動させたようです。この鎖の間の茶室というのが小堀遠州のつくり上げた傑作で、それを後の茶人誰もが踏襲しようとしたのでした。そして、千利休、古田織部に続く茶の湯の後継者と目されるようになったのでした。

この茶席の動きの中に、庭に飛び出た茶室・向峯居の使われ方は触れられていませんが、この茶室も客を感動させる舞台装置であったのだと思います。この続きをもっと詳しく知りたい方は、ここをクリックして見てください。




隣接する日本庭園

日本庭園が茶室の前に広がっています。中央に「中之島」があって、その周りを一周ぐるっと回れる「回遊式・舟遊式庭園」です。パンフレットによれば、小堀遠州が仙洞御所の東庭に作庭したものの写しのようです。

京都の仙洞御所の庭園は現在一般にも公開されていて、見学が可能だそうです。インターネットのホームページで見た限りですが、本物の仙洞御所の庭園とこの施設の日本庭園は別物です。訪問したわけではないので断言しない方がいいかもしれません。仙洞御所の回遊式庭園は、いつか訪問してみたいと思います。


施設の情報

ふじのくに・茶の都ミュージアム

観覧料 大人:300円、大学生以下の学生・70歳以上:無料
休館日 毎週火曜日・年末年始